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日本が置かれている状況は「中途半端な危機」

 2010-07-23
日本は危機に瀕していると言われる。実際、不安感や閉塞感がよく取り沙汰される。日本を取り巻く環境を考えると、将来を必ずしも楽観できないのは確かだが、多くの国民は漠然とした不安をいだきつつも、妙に安心しているようにも見える。現在の日本が置かれている状況は、「中途半端な危機」と言っていいかもしれない。

危機といえば、まず経済危機だ。米国のサブプライム問題やリーマンショック以降、世界経済は変調をきたしている。このところ多少は復調の兆しが見えてきたものの、先行きは予断を許さない。日本も輸出産業を中心に、企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、雇用も充分に回復していない。しかし世界を見渡せば、大変なのは日本だけではない。米国も欧州も経済危機から脱出しきれておらず、好調だった中国もやや翳りが見られる。世界の中で日本経済だけが特にひどいわけではないことが、危機感を薄くしている。

現在の日本は経済危機といいつつも、物は余るほど豊富だし、商品価格も安い。よくデフレが問題にされるが、物が豊富で値段も安いのは消費者にとってはいいことだ。一人当たりの所得水準も、先進国グループの中では後退してきているものの、依然として相対的には高い。GDPでは今年あたり中国に抜かれそうだが、それでも一人当たりGDPでは中国の10倍もある。アジアで一人当たりGDPが日本より高いのは、都市国家のシンガポールだけだ。また、最近の日本の若者は車や海外旅行にあまり興味を示さないと言われるが、これは経済的事情だけでなく、物や消費への欲望が希薄化しているのかもしれない。となると、なおさら窮乏しているという実感は薄くなる。

日本の製造業の底力が依然として強いことも、国民が日本経済に意外と不安をいだいていない理由だろう。今回の世界経済危機は金融危機の性格が強く、米国や英国のように金融を柱にしている経済は大変だが、日本は金融立国の道をたどらなかったこともあり、経済の根幹がおかしくなっていない。やはり、製造業が強い経済は安心だ。

財政危機については、日本の財政事情は数字だけ見れば危機的な印象を与える。菅首相も最近のギリシャ財政危機を例に挙げて、財政再建を訴えていた。しかし、日本の国債の約95%は国内で消化されている。他国からの巨額の借金で財政をまかなっている米国やギリシャなどとは、同様には論じられない。しかも、日本の個人金融資産は1400兆円と巨額である。日本国債の格付けが引き下げられたところで、たいした影響はない。もちろん日本の財政事情も手放しで楽観できるわけではないが、すぐに日本が財政破綻してIMFの管理下に置かれるような心配はない。また、日本では消費税アップへの反発に見られるように、増税への国民の抵抗感が強いため、増税の代わりに国債増発で財政をまかなってきたという面もあるだろう。

政治については、近年、日本では首相の入れ替わりが目まぐるしい。就任しても、政権担当者としての資質に疑念がいだかれ、支持率が急落することを繰り返している。しかし、その割には、政治への絶望感が広がっている様子もない。もともと日本は一般国民のレベルが平均的に高く、仲間同士の協力が得意という国民性がある。必ずしも強力な指導者が引っ張るような社会体質ではない。リーダーは誰でもいいというわけではないにせよ、一般国民の基盤が強固なため、国家指導者が多少お粗末でも、社会全体がさほど動揺するわけではない。

このほかにも様々な背景はあるが、これからも日本では「中途半端な危機」が続いていきそうだ。国民は、今後の日本は大変ではあっても、なんとかなると、心の底で思っているのかもしれない。

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